Rose Blaze
二次創作SS置き場+萌語りや日々の呟き的な何か。
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Author:竜胆の箱
末期のオタク。
好きなものは鶏肉と甘いもの。
あと匂いのキツイ野菜とかも好物です。

中世ヨーロッパ的な雰囲気に弱い。

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コーセルテル:風×暗→主(1/2)
※以前某所に投稿したものです。
本編から数年後設定のため捏造注意。




(1/2)
 ずいぶん久しぶりだというのに、幼少を過ごした家は昔とまったく変わっていなかった。
 柔らかな木漏れ日の影にある屋根と、壁に寄り添う蔓草、その周囲を取り巻く懐かしい空気。帰郷した風竜は、体中で感じる心地の良い匂いに酔っていた。
 しいて変わったことを挙げるとするなら、この家の主が少し年を重ねたことだ。サータはそれでも優しい笑顔のマシェルに、何年かぶりの抱擁で自分の喜びを伝えた。
 マシェルもそれに答えて彼の背に手を回す。随分大きくなってしまったね、と育ての親が言う台詞に、サータは愉快そうに笑った。
「どうして笑うんだい、サータ」
「だって、マシェル。凄く意外そうな顔だもの」
 あの無駄に伸びた兄がずっと側にいたのに。弟の俺だって成長してるに決まってるじゃないか。
 そんな事を言ってサータがマシェルの向こうを指差す。そこにはナータがいた。別れた日と変わることのない仏頂面で立っている。
 サータがマシェルの背を追い抜いたのと同じように、ナータもまた肉薄していた。
 マシェルはちょっと頬を膨らませる。その仕草にサータは感慨を覚えた。それは恥じ入るとき、反論するときのマシェルの癖だった。
「ナータは普通より特別大きいと思ってたんだ。だってこれでまだ少年竜だよ?まさかサータまでこんなに大きいなんて」
 マシェルの言うようにナータは縦にこそ大きかったが、顔立ちや筋肉のつき方は未だ幼さを残していて、一見はサータより年下のように思えた。
 その矛盾は竜の里に帰っていったサータ、そして他の兄弟とは違い、ナータがマシェルと共に過ごしてきたという証拠であった。
 コーセルテルで過ごすうちは、竜は少年のまま永遠の時を生きる。そのためにナータの声もまた、透き通った夏の風のように昔と変わらなかった。
「マシェル、サータ。家に入って話さないか」
 食事の支度の途中だろう、と促すその声の懐かしさにサータの心は弾んだ。
 あのころは毎日がこうだった。昼間外で走り回って、帰ってくると必ずこの二人がいた。そして兄弟たちで集まって、彼らの周りをよく囲んだものだ。
「マシェルの料理久しぶりだ〜!俺も手伝おうかなぁ」
 発奮して袖を捲くるサータだったが、マシェルは家に入ると彼に椅子をすすめた。
「今日のサータはお客さんだからね。座っておいでよ。風竜の里から飛び続けで疲れただろ?」
 母親の口調で労うマシェル。サータはそんなところも昔のままだなと思った。
 この家は誰かが遊びに来るときはいつも、歓迎の準備に忙しかった。そして主の彼は相手の喜ぶ顔を見るためにいつも張り切っていた。
 マシェルが台所に立つと、その少し後ろにはナータがいて彼の背中を見ている。 サータ自身はこうしてテーブルの側で待っているか、
時々作業中の二人の間に入っては、皿を割るかアータと揉め始めるかのどちらかだった気がする。
 ぼうっと思い出に浸るうちにいい匂いが漂ってきた。
 たちまちご馳走が並んでテーブルを埋め尽くす。子供の時は大きく見えたテーブルも、大人2人と少年が座ればお互いが意外に近かった。
「うわぁ、すごいな。美味しそうだ」
 心からそう言ってサータはフォークを握った。しばらく無言で口を動かす。
 相変わらずマシェルの料理は温かく、身体の内から彼を満たしてくれた。一旦空腹が落ち着くと、食事をしながら料理の感想や兄弟の近況を二人に話し始める。
「カータが、俺がここに帰るって言ったら羨ましがってたよ。あいつは遊びにこないの?」
 一番下の弟について語れば、どちらも顔を見合わせて笑った。
 ナータに関してはそれこそサータのように、近しい者でなくてはわからないくらいの微妙さだったが。
「逆だ。あれが一番よくここに来ている」
 ナータの苦笑に、この前来たのは3週間前だよとマシェルの補足。
 サータも思わず笑った。光竜の里(月)からここまでそんなに頻繁に訪ねて来るとは、甘えん坊だったあいつらしい。
 逆に一番疎遠なのはマータのようで、彼女の話になるとマシェルは色々とサータに質問をした。
 サータもマータと同じように、ここを出てからずっと帰っていなかったのだが、連絡だけは地味に続けていたせいか彼女ほど心配されてはいなかったと見える。
 こうして過ごすうちに、皿の上はすっかり空になった。
 ほとんどサータ一人が食べたようなものだが、マシェルもナータも食が細い方なので最初からそれを当てに作ったらしい。
 食後に黄金色の蜜菓子と合わせ、苦味が出るほどに葉を開ききった、色の強い茶を熱い湯で割る。
 これが薄いのがタータで、濃いのがハータだった。
 本当に昔と同じように過ごすと、当時にかえったような気になる。そうなるとやはりアレも再現してみたくて、サータはカップの縁に口を付けたまま提案した。
「ナータ、今日大部屋で一緒に寝ようよ」
 相手のきょとんとした顔にサータは頷く。
 部屋分けされる前に兄弟で使っていた7台のベッド。それを繋げてシーツで覆えば二人くらいは眠れると主張した。
「な、いいだろ」
 ナータはやはりというか何というか引け腰で、最初は渋っていた。
「だが……マシェルは」
 チラチラと隣に視線を運ぶ。さみしがりやのマシェルを一人にしていいものかと悩んでいる様子だ。
 当の本人はというと別段気にした様子もなく、サータの発言に手を叩いて明るい表情だ。
「いいじゃないナータ、兄弟水入らずで」
「マシェル」
 彼が引き止めてくれるのを期待していたのか、ナータは肩を落とした。露骨な仕草にサータは吹き出してその背に飛びつく。
「ほらほら、俺で我慢しなよ。マシェルとはいつでも一緒に眠れるだろ」
 するとナータは急に神妙な顔つきになった。
 サータも自身の発言に思うところがあったのか、ナータの顔を覗き込んだまま固まってしまう。抱え込んだ背と己の胸のうちにある、ナータの黒い翼がざわめいた。
 一瞬の静寂。マシェルがそんな二人に呟いた。
「まだ一日あるから、明日は僕も入れてね?」
 それでようやく二人は離れたのだ。

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